本の紹介、ほか
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本の紹介
●私が書いた本の中から、いくつかを紹介します。
●現在も発売中の本もありますので、一部しか、紹介できません。
もし「もっと読みたい……」という方がいらっしゃれば、書店などで、
お申し込みください。

(本文より)

ドラえも〜ん・野比家の子育て論創芸社)

創芸社・1300円
ISBN4-88144-085-3 C2077

はじめに……

 「ドラえもんで子育て論が書けるかって?」……私が「書いている」と言うと、皆がそう言いました。「あのようなメチャメチャな世界のどこに?」と。そうです、ドラえもんの世界は、まさにメチャメチャ。時間も空間もありません。しかし、ドラえもんの世界には、藤子・F・不二雄氏というすばらしいコミック作家の、世界が生きています。誰をも感動させる、すばらしい世界です。もちろんそこには、藤子・F・不二雄氏の、子どもたちにたいする熱い思いが、織り込まれています。それを私という一幼児教育家の目をとおして書いたのが、この本、『野比家の子育て論』です。

第一章
          のび太論・子どもたちよ、がんばれ

          サラッと読めば、コミック。
          深く読んでも、コミック。
          なんでもない、一コマ一コマに、
          子育ての秘密が隠されている。
          子どもたちよ、がんばれ!
          そんな思いで書いた、第一章、
         『のび太論・子どもたちよ、がんばれ!』

テスト

 あなたは、ドラえもんについて、どの程度、知っているでしょうか。まずテスト。

Q1「ドラえもんは、何者か」
  ・ネコ型ロボット
  ・進化したネコ
  ・ネコ型宇宙人
Q2「ドラえもんの色は、何色か」
  ・緑色
  ・青色
  ・決まっていない。
Q3「のび太の家族は何人か」
  ・ドラえもんを入れて、四人
  ・ドラえもんを入れて、五人
  ・ドラえもんを入れて、六人
Q4「パパの職業は何か」
  ・現場労働者
  ・科学者
  ・会社員
Q5「ママの職業は何か」
  ・専業主婦
  ・キャリアウーマン
  ・パパと共働き
Q6「野比家は、どんな家か」
  ・マンションの一室
  ・郊外の住宅地にある一戸建て
  ・都心の商業地にあるビル
Q7「のび太の成績は?」
  ・たいへん優秀な子ども
  ・成績は平均的
  ・勉強も運動もまったくダメ
Q8「のび太は、何年生か」
  ・小学四年生
  ・小学五年生
  ・小学六年生
Q9「ジャイアンという少年は、どんな子か」
  ・いじめっ子
  ・体の大きな、やさしい子
  ・のび太のめんどうをみる、中学生
Q10「ドラえもんは、誰の作品か」
  ・藤子・F・不二雄
  ・藤子不二雄A
  ・はやし浩司

正解は、順に、xxxxxx。

【全問正解のあなた】
 あなたは、子どもの世界をよく知っている人です。あなたは、あなたの子どものよき友。この
本を読んで、あなたはますます、すばらしい親になるでしょう。そしてあなたは、ますます子ども
に尊敬されるようになります。

【全問まちがえたあなた】
 あなたはあまりにも、子どもの世界を知らなさすぎる。おおいに反省してください。この本を読
む前に、コミック『ドラえもん』の・巻・巻だけでもよいから、まず目を通しておいてください。


第1話、のび太の世界

のび太

 のび太は、小学五年生。誕生日は、昭和三九年(一九六四年)八月七日(・巻五一頁)。そののび太が、・巻の冒頭にある『テストにアンキパン』の中では、かけ算の学習をしている。ドラえもん「2になにをかけたら、6になる」
のび太「3だ」ドラえもん「そら、できた」

 つまりそれまでの、のび太は、その程度の計算もできない。ドラえもんの力を借りて、やっと
そこまでできるようになる。しかし小学五年生で、かけ算とは……?

 現在、かけ算の九九は小学二年生の後半で学習することになっている。小学三年生では、
二〜三桁かける一桁のかけ算。小学四年生では、数桁かける数桁のかけ算。さらに小学五年生では、小数どうしのかけ算を、学習する。その進度からみても、のび太の学力は、かなり……?。そこで子どもたち(小学四年生)に聞いてみると、「のび太は、落ちこぼれ!」という返事がかえってきた。「テストは、いつも〇点だよ」と。

 そこで調べてみると、(42)巻にこんなシーンがあるのがわかった。のび太はこう言っている。「喜んでくれ。こないだのテストで、〇点!!……だってさ、これまでぼくは、五回に一回のわりあいで、〇点を取っていたんだ。今度は、九回続けて、点を取ったんだ。わずかだけど、一〇回目の〇点は、ひさしぶりなんだぞ」(六七頁)と。

 しかしテストで〇点を取るというのも、難しいことだ。メチャクチャ書いても、偶然、それが正解だったりして、数点はとれる。全部、わざとまちがえて答を書くというのは、一〇〇点をとることよりも、ひょっとしたら難しいかもしれない。……というようなことを子どもたちに説明すると、子どもたちは、こう教えてくれた。「のび太はいつもテストのとき、居眠りしているんだよ。だからなにも書かないんだよ」と。なるほど。それなら〇点になる。

 のび太がそうであるかどうかという議論は別にして、今、ふつうの学校のふつうのクラスでも、テストでいつも〇点という子どもは、二〇〜三〇名に、一人前後はいる。授業態度も散漫で、先生の話など、まるで聞いていない。ノートといっても、落書きノートで、宿題もほとんどしてこない。……できない。のび太のようにいつも居眠りをしているというのは、珍しく、たいていはいつも教室の中で、騒いでいる。授業そのものを破壊することもしばしばである。ぼんやりしていてくれたほうが、教師としてはまだ教えやすい。中には授業中、フラフラと外へ出ていってしまう子どももいる。

 が、のび太は人気者だ。そう思って、再び子どもたちに聞くと、全員が、「のび太なんか、大嫌い!」と。私はこの意見には驚いた。のび太は、ドラえもんと並んで、コミック『ドラえもん』の主人公ではなかったのか。そこで私は、改めて、人気度を調べてみた。


ドラえもん ……一〇〇%、好き。一五名の全員が、「好き!」と手をあげた。
のび太 ……一人の子どもを除いて、一四名の子どもが、「嫌い!」と手をあげた。その一人というのは、のび太のように、勉強がまったく苦手な子どもだった。そこでその子どもに、「君はどう思っているか」と聞くと、「ぼくは、わからない」と。

しずかちゃん…… 六〇%、好き。男子は好き・嫌いが半々ぐらい。女子は全員「好き」と答え
た。スネ夫、ジャイアン…… 全員が、「嫌い!」と手をあげた。

 『ドラえもん』は、そういう意味でも、わかりやすいコミックだ。悪人は悪人らしい名前、善人は善人らしい名前がついている。落ち目のタレントの名前が、「落目さん」(・巻一一四頁)であったりする。つまり名前だけ見れば、その人がどんな人物であるか、だいたいわかるようになっている。しかしのび太が、そこまで嫌われているとは、私も知らなかった。のび太は「伸びる」の「のび太」ではなかったのか。そこで子どもたちに、どうして嫌いなのかをたずねると、いろいろな答がかえってきた。

「眠ってばかりいる」
「バカだ」
「頭が悪い」
「いつも泣いている。泣き虫」
「小さいころは、頭が良かったんだけど、小学三年や四年生になったとき、勉強が嫌いになっ
たんだよ」
「音痴で、ドジで、まぬけで、のろまで、泣き虫で、あほ」
「運動神経も悪いよ。五〇メートル走るのに、一五分もかかるんだよ。逃げ足だけは、はやい
けどね」
「昼寝ばかりしていて、勉強しない」
「先生に叱られてばかりいる」
「ドラえもんがくれる道具ばかりに頼っている」など。

 のび太にたいする評価は、きわめて低い。特に、最後の「道具ばかりに頼る」という意見が強かった。のび太はなにか困ったことがあると、そのつど、ドラえもんに助けを求める。ドラえもんはそれに応じて、いろいろな道具を出して、のび太を助ける。それが『ドラえもん』の基本だが、しかしやがて、のび太のほうから、積極的に道具を求めるようになる。たとえば(34)巻を見てみよう。この中では、のび太のほうが積極的に、ドラえもんにいろいろな機械や道具を求めているのがわかる。

のび太「ドラえも〜ん。火事や交通事故を見る機械を出して」
ドラえもん「なんだ、そりゃ」
のび太「みんな、おもしろい事件を見ているのに、ぼくだけ見たことないんだよ」(二六頁)

のび太「ドラえも〜ん。写真みたいな絵のかける道具を出して」
ドラえもん「そんなのつまんないよ。写真みたいな絵がほしければ、写真をとればいいんだ」(四六頁)

 『ドラえもん』では、道具のおもしろさが、コミックの柱になっているため、道具を否定することはできない。ドラえもん自身には、ほとんど「パワー」はない。道具を使ってはじめて、ドラえもんはパワーを発揮する。しかしその道具には際限がない。まさに手当たりしだいといった感じ。たとえば同じ(34)巻のほかのシーンでは、『雲かためガス』を使って、雲をかたくする。次に、タケコプターで、その雲にのり、そこで『うき水ガス』を使って、雲の上に泉をつくる。さらに『自動万能工事マシーン』なるものを使って、神殿をつくる……、など(一六〇頁)。こうして書き出したら、キリがない。この(34)巻だけでも、ほぼ全編で、約二五種類以上の、新装置や、薬品が登場する。のび太は、その道具に頼りすぎる。

 ついでながら、藤子・F・不二雄氏自身がのび太について、述べているところがあるので紹介する。のび太は自分の履歴書を、未来から取り寄せる。それには次のようにある((42)巻一八九頁)。

「野比のび太……野比玉子の長男。勉強もスポーツも苦手。おっちょこちょい。弱虫で、ノロ
マ。高校は、もののはずみで、合格。大学は、一浪ののち、補欠入学……」と。

★つづきは、本文で



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